相変わらず20階建て以上のタワーマンションの建設ラッシュが続いています。

2017年以降も全国で毎年15,000戸前後の供給が続き、うち首都圏のシェアが7割強、東京23区だけで5割強を占める見通しです。

ただ、ここにきてタワーマンション特有の問題から、専門家の間では今後を心配する見方が広がり始めています。

今更という感もありますが、将来的に中古市場でタワーマンションが敬遠されるリスクもあるため、論点を整理してみたいと思います。

そもそも2000年以降にタワーマンションが急増した背景には、厳しい円高で日本の製造業が海外への生産移転を進める中、広大な工場跡地にデベロッパーが目を付けたことにあります。

これらの物件は、比較的若いファミリー層がリーズナブルな価格で取得でき、アベノミクス以降は富裕層の節税対策や海外投資家の投資対象となったことで、中古物件の値崩れも起き難く、換金性が高いことで人気を呼んできました。

しかし、タワーマンションの建設が本格化してから20年近くが経過し、「住まい」としての性能や機能に様々なデメリットが顕在化してきたということなのでしょう。

指摘されていることの1点目は、建物の維持管理コストが、通常のマンションの1.5~2倍にのぼるほか、今後相次いで、築後12~15年で行なう大規模修繕期を迎えることです。

デベロッパーが、新築時の修繕積立金を抑える販売政策をとってきたため、必要額まで積み上がっていないケースが多いうえ、最近の工事費の高騰で、積立金の追加徴収や工事費削減によるスペックダウンの懸念が出始めています。

2点目は、タワーマンションの「柔構造(建物全体がしなり、地震の揺れをやり過ごす)」に様々なデメリットがあるという指摘です。

東日本大震災時に首都圏で観測された、揺れの周期が長い長周期地震動は、近い将来発生が予想されている南海トラフ地震でも生じると見られる中、タワーマンションへの影響が未知のリスクとなり、国土交通省からは新しい設計基準での再検証と補強が求められています。

いずれにしても、タワーマンションに対する今後の心配に、適切な対応が行われなければ、当然マンションの価値や魅力の低下に繋がります。

この結果として、1棟当たりの戸数が多いタワーマンションの空き家化が進むと、日常的な維持管理が滞り、一挙に廃墟化するリスクも頭に入れておく必要があると考えます。

 
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