先日、実家の土地のことで、思いもよらないことがあった。
私が子供の頃、親が親友と一緒に隣合わせの土地を購入した。しかし、親の友達は金銭的な事情があって土地を親戚に売却してしまい、ずっと空き地になっていたが、今度アパートを建てることになったという。アパートを建てるうえで土地について調査したところ、隣の家との境界線に数十年前に建てたブロック塀の角が、わずか5cmほど隣の敷地にはみ出ていることが発覚した。もちろん、故意に隣にはみ出るように造ったわけでもなく、数十年前のことで、今となってはなぜそうなってしまったのかもわからない。当時は、図面や設計などはあいまいだったのだろうか。しかも、そのブロック塀は、家の親が隣の敷地の持ち主の親戚のブロック屋さんに依頼して造作したものだった。
現地で隣地の所有者と一緒に状況を確認、合意にいたる
境界線はみ出し問題については、隣の土地の持ち主が知り合いだったこともあり、特に金銭問題やトラブルに発展することはなかったが、私は実家の土地の名義人の一人になっているため、関わりのある全員と土地のプロが、現地に出向いて「立ち会い」を行ない、状況を確認した。後日あらためて書類に署名・印鑑を行なう義務があった。「忙しいから、現地に行けない」「問題ないから、代理で署名しておいて」といったことができないのだ。それだけでも面倒に感じたが、もし持ち主が面倒な人だったら……。植木や塀が土地の境界線を越えて隣の敷地に入っていることでのトラブルは少なくなく、裁判沙汰になるケースもあるという。
隣地との「境界線」を明確にする方法
土地の境界は、線が引かれているわけでもなく、普段はあまり気に留めない人も多いだろう。しかし、土地を売却する場合境界線を明らかにしておく必要がある。現地で境界を示す目印(「境界標」)を確認して明確になればいいが、明確な境界標がない場合や境界が不明瞭な場合は、土地の実測作業を行い、以下の所定の手続きを踏む必要がある。
①家の実家のケースのように、隣地の所有者らに立ち会いを求めて土地の境界を確認してもらい「境界の合意」があれば、境界が明確になる。
②専門家が現地で、実地調査・測量・関係者に対して事実の聴取・資料提出を求め、調査を行い、土地が登記された際に公的に定められた公法上の境界(筆界)を明らかにする手続きを行なう。
③隣地の所有者と境界について争いがある場合は、裁判所に「境界確定の訴え」を提起することもできる。
①のように、隣の家の所有者との間で「境界の合意」があっても、必ずしも公的な「筆界」と一致するとは限らないので、登記をして「所有権界」と「筆界」とを一致させておく必要がある。
土地の売却では「境界線」を確認しよう
土地の境界線は、土地と同様、売り主から買い主に引き継ぐ責任がある。境界線がわからないと、売買価格を決める上で大切な面積を正確に算出できない。境界が不明確な場合は、将来相続や売却などの際に紛争になる可能性があるので、媒介業者に相談してどうしたらいいか確認するといいだろう。